2010年08月05日

沈黙のコミュニケーション 悲嘆を受容する事

出来ることならば、その人らしい暮らしを送るために
今よりも、ほんの少しでも、その人らしく楽しみのある暮らしを送ってほしい。
少しでも、意欲を引き出して。

私たち、ケアマネジャーは、そんな望みをもって利用者に寄り添っている。

「出来ることならば」
これは、事の他、難しい場合が多々ある。

それでも、何とか目の前の切なそうな思いを
何とかできないだろうか…
いつも、そう思う。

昔は社交的で、家庭にいる時間のほうが少なかったという彼女は
脊髄小脳変性症の診断を受け、告知されてからというもの
通院以外は閉じこもりの生活を送るようになっていた。

私が、偶然、認定調査に行ったときには
自力での移動が困難になっており、
気の毒なほどの、意欲の低下が見られた。

認定調査がきっかけで、介護支援専門員として関わることになって1年。

私は、今でも彼女の意欲を引き出せないでいる。

最近は、嚥下障害も始まり、
食事以外でも、お話していても咽込みが見られるようになった。

彼女自身の願いは、

「家族に迷惑を掛けたくない。」
「治らないのに、リハビリなんてしても意味がない。無駄にお金を使うだけ」
「早く、死にたい。」

この3つは、1年前から変わらない。


先月、いつもは口数の少ない彼女がよく喋った。

「もう、こんなして生きているのは嫌だ。
 自分で出来ることも、なくなってきた。
 家族には、どんどん迷惑も掛ける。
 入院や入所も考えるけど、お金がかかるのは駄目だ。
 もう、何の役にも立たない。
 はやく、死んでしまいたい。」

神経内科の病棟に勤務していたときの、たくさんの患者さんたちの顔が、言葉が、脳裏を過ぎった。

こんな時、私に出来る支援なんて
専門職に出来る支援なんて、ほとんどない事を知っている。

「そんな事ないよ。」等という言葉は、ただ乾いて宙に浮くだけ。
「こんな風にしてみたら?」等という言葉も、無理解にも甚だしい。

まさか、何も言葉掛け出来ない自分を曝け出すことを恐れて、その場を逃げるなんて事は、絶対にしてはいけない。

そうだ…いつも黙って聴いていたんだ。


あの頃と違って、今は「沈黙のコミュニケーション」なるものが、専門的な関わりとしてある事を知識として持っている。
だけど、ただ黙っていればいいわけではない。

私なりの方法だが、沈黙の時の流れの中で
利用者の視線・目の力・微妙な体の動きから、感情の流れを見る。

感情の流れを見ながら、時々話しをする。

「こんな風に、留守番してくれるじゃない?
 家を空ける事が出来るのは、こうしていてくれるからじゃない?」
「留守番できるような、役になってなんかない。」
「でも、誰がきたとか、用件聞いてくれるじゃない?」
「それは、そうだけど…」
「お孫さんに、何か教えるとかは?」
「もう、教えることなんてねぇ。」
「私には、切ないのとか分からないのかも知れないけど、
 でも、こうやって頑張ってお家で過ごしている姿はさ、
 お嫁さんとか、お孫さんに、何かを教えていると思うよ。
 だって、お嫁さんたち、一生懸命だもん。」
「うん。」


少し、彼女の気持ちが揺れたのが見えた。

何も、大きくは変わらないのかもしれない。


もちろんだけど、彼女がリハビリを積極的にするわけでも、
昔のように出掛けるなんて事がないことも、
その出掛け先が、介護保険関連の通所サービスなんて事も

ほとんど、有り得ない事だと思う。


でも、堕ちた気持ちが
ものすごく深いところにあった気持ちが、

より平らなところに戻ってきてくれれば
それで十分だと、思う。


生活そのものは、「閉じこもり」であっても、
その自宅という限られた空間の中でありながら、

その人らしい、暮らしが、
大事に思ってくれている家族に見守られながら、
せめて、平穏でありますように。

そう願う事を、伝える事しか出来ない。

でも、これが私が今の彼女に出来る、
唯一の直接援助かな?

そう、思います。





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小櫻の独り言

私自身に多くの問題がありながら、人の支援が出来るのか?

…セルフエスティームに関わる事です。


支援者の質に関して、
その支援者の、出自や生活暦・素行などを元に質を計られてしまうと、
正直、太刀打ちが出来ません。

私が歩んできた歴史も、
今、過ごしている現実も、

私の事実であり、事実は変えることが出来ません。

私の背景が、支援者としての質を疑われるものになるならば、

そんなものは、支援者の質として関係ない事を証明したい。





posted by 木下 小櫻 at 01:44 | Comment(0) | 介護支援専門員

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